株式会社AIVOLT:天才的プログラマー・軍神未来が挑む「デジタルヒューマンAI」の社会実装

「私た誰かを映した映像を元に、声も見た目も、さらには性格まで再現できるAIがあったら、世界はどう変わるのか? そんな未知の技術の実装化を目指すのが、17歳で起業、東京都主催のビジネスコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2019」で応募1800件の中から優秀賞を獲得した天才的プログラマー・軍神未来氏だ。その技術的特徴は? 彼女が描く未来は――?

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軍神未来は、なぜ今「汎用AI」より「個性の再現」に賭けたのか

画面の向こうから聞きなれた筆者の声がする。口調も声も、話す「間」のようなものも、私そのものだ。辛うじて、話す内容が私が知らないことだったから、「これ、自分じゃない」と認識できた。軍神氏が笑う。

「ナツメさんがYouTubeに出てたんで、それをデータに、ちょっとつくってみたんです。顔や声だけなら5~15分程度の映像があれば再現できますよ」

彼女は天才的なプログラマーだ。高校在学中、飛び抜けたエンジニアリングスキルを活かし、アプリの開発で起業した。当時から社会性が高く、例えば、学生のボランティア活動を信用スコアに変える「Lyglee(リグリー)」などを開発した。

「しかし『世界一を取れるような会社を作りたい』という思いがあったんです。そこで選んだのが、『デジタルヒューマンAI(個性を再現するAI)』の領域でした。
 現在主流になっている一般的な汎用人工知能(AGI)は、よく言えば波風を立てない無難な対応、悪く言えば無個性な対応をすることは得意です。一方、汎用であるがゆえに、特定の個人の個性を出すことは難しかったのです」

彼女はここに挑戦し、3年もの間、開発に没頭した。その結果、顔や声はもちろん、充分なデータがあれば、「会話の間」「気遣い」といった心理的な動きまで再現するAIを完成させた。

写真中央右、「WINNER」を持つのが、株式会社AIVOLT 代表取締役CEO 軍神未来(ぐんしん みらい)氏。

セキュリティの担保と圧倒的なコスト優位性

気になることがあった。過去、著名人のAI再現プロジェクトが話題になったが、それと同じなのでは? と感じたのだ。しかし軍神氏によれば、それとは違うらしい。従来のデジタルヒューマンAIは、1つ1つ手作業で特定の個人を創っていくもので、開発に膨大な時間がかかるうえに、開発者のスキルによって品質にばらつきが出る。

「私は、デジタルヒューマンAIを作るための基盤モデルを構築しました。例えるなら……AIによる著名人の再現が『手作りの人形』なら、私がつくったのは『人形の製造装置』です」

すなわち、軍神氏は何か物珍しいものを作ったのでなく、社会実装を想定した開発を行ったのだ。象徴的なのは、AIのデータ量を可能な限りそぎ落とし、軽量化したことだ。

通常、人間の声や顔、個性を再現するような高度なAIを作れば、巨大なプログラムと計算能力が必要になる。一方、軍神氏はデジタルヒューマンAIの賢さや人間らしさを保ったまま、データ量や計算処理の負担を極限まで削ぎ落とした、というわけだ。

プログラムの軽量化により、利用する企業には2つのメリットがあります。まず、運用費を大幅に落とせます。“重いAI”を動かし続けるには、高額のサーバー代や電気代がかかりますが、当社のAIなら自社サーバーで動かせるため維持コストが軽減され、人を1人雇用するのと同じ金額で何人も何十人ものAIを“雇える”のです。また、外部と通信する必要がないため、外に情報が漏れません

これがさらなるコストカットとなる。現状、AI市場で提供されているサービスの多くは、入力された会話内容などのデータを外部のサーバーへ送信し、1会話ごとに従量課金される仕組みが多い。使えば使うほど、料金はかさむ。対してAIVOLTが開発したAIは、導入企業のサーバー内で稼働するから、顧客企業は「買い切り」ができるのだ。

キャラクターIP創出・運用のノウハウを有する株式会社ディー・エル・イーと業務提携契約を締結。
写真左がディー・エル・イー 代表取締役社長CEO・CCO 小野亮氏、右が軍神氏。

トップ人材を“量産”、ユースケースと「共創」プラン

では、彼女はこの技術を何に使うのか? 実はここが、相談ポイントだった。彼女の「デジタルヒューマンAI製造装置」は既に実用化レベルにある。だからこそこの段階では、特定のドメイン(コールセンター等)に特化したシステムを特定の企業と共同開発し、ともに販売していきたい、というのだ。

「導入プロセスは迅速です。企業が使用しているマニュアルや人材育成用の教材をAIに学習させ、実際にAIを稼働させて評価を行えば、AIは自ら『この会話の仕方がまずかった』『これは良かった』と学習し、対応の精度を上げていきます。それに加え、成績が優秀なトップオペレーターの対応データを追加学習させれば、導入の初期段階からベストなオペレーターとほぼ同等の対応が可能なAIを構築できます。これにより、AI特有の不自然さを感じさせない対話が実現するはずです」

具体的なユースケースとして、軍神氏は「クレジットカードの支払い催促」や「ECサイトでのアップセル提案」を挙げている。これらの業務ではオペレーターの力量によって成果(返済計画の立案や追加販売など)が大きく変わるため、ベストな対応ができる人材のノウハウをAIに移植して稼働させるメリットが大きい、と考えられるのだ。

また、音声だけでなく映像(顔)を付与することも可能だから、携帯電話ショップのウェブ予約対応や、銀行の住宅ローン相談など、対面に近いウェブ接客への応用も視野に入る。

さらに、ゲーム業界との協業も想定している。通常、ゲーム内で高度なAIを用いたキャラクターを稼働させる場合、1会話ごとの従量課金コストが実装の障壁となるが、AIVOLTの技術は買い切り型など、導入企業がコストを試算しやすいため、キャラクター生成とも相性が非常に良い

来たる近未来!人をデジタルに移行するAI技術「AI VOLT」┃IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO

うちの業界ならどう使う?――デジタルヒューマンの未来像

「ほかにも、様々な業界で、様々な使い方があるはずです。日本の労働人口が減少する中、私たちは社会全体の生産性を2倍、3倍に引き上げることを目指しています」

現在、同社は自社のAI技術をどのマーケットに提供していくか、販売先の選定を進めている段階だ。中でも、協業を希望しているのは事業規模が大きい企業だ。

「時価総額で言ったら1000億円以上の企業が良いですね。AIの実装によって生産性が劇的に向上し、それが時価総額の向上という明確な形で跳ね返ってくる、そんなスケールの企業と組むことが、両社にとって最大のメリットになるはずです」

彼女の夢は止まらない。保険営業などのインサイドセールスや、アウトバウンドのテレアポ業務においても、優秀な営業担当者のノウハウを再現することで、属人的な業務の効率化が期待できる。さらに、ホテル業界における宿泊客からの問い合わせ対応にも応用可能だ。また、エンターテインメントの分野においては、往年のスターの姿と声をAIで再現し、歌やパフォーマンスを披露させる、といった活用も、「権利の問題がクリアになっていれば技術的に可能」だという。

ちは技術の企業なので、これを活用してくださる企業と組みたい、と考えています。ほかにも、『うちの業界ならこんな使い方があるよ』ということがあったら、ぜひお声掛けいただきたいですね」

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