株式会社リーディングマーク:属人的な採用・マネジメントからの脱却。専門家集団が生み出した「ミキワメAI」の衝撃

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10分の検査で「自社で活躍する人」を可視化。勘に頼らないデータ採用

筆者が勤務していた広告代理店には、「活躍する人物の型」といったものがあった。人と会話をする時に物おじせず、広告物をつくるだけに美意識も高い。一方、間違いがあったら損害賠償ものだけに慎重な面もある――。

しかし筆者は間違いなくそうではなかった。どうも、慎重さに欠けたのだ。結局「電話番号を1桁間違えれば損害賠償もの」、といった細かい仕事に疲れ、数年で退職してしまった。

ミキワメAIは、そんなミスマッチを防ぐ。株式会社リーディングマークの代表取締役社長・飯田悠司氏がその仕組みを話す。

「実際に企業で活躍する人は、会社の雰囲気や社風によって大きく異なるものです。そこで『ミキワメAI』は、まずこの『活躍できる社員』がどんな人物なのかをデータ化します」

既存の社員に対し、およそ10分程度で済む性格検査を実施する。これにより、部署ごとの性格的特徴や、その企業にどんな性格の人物が多いかを可視化、さらに「自社で実際に成果を上げているハイパフォーマー(活躍している社員)」の性格傾向を抽出する。

「そして、このデータをもとにカスタマーサクセスが会社ごとの考えやデータを踏まえて、基準作成を行います。心理学と統計学に基づいた科学的なものです。その後、採用候補者にも性格検査を実施し、自社で活躍している社員と候補者の検査結果を照らし合わせると、自社や特定の配属先で活躍できる可能性が『S~E』の14段階で判定されます」

ミキワメAIの画面。実際はこれよりもっと詳細に、どの社員と傾向が似ているかも把握可能。
詳細は https://mikiwame.com

 つまりミキワメAIは“この採用候補者が、自社で既に活躍している社員の性格特性にどれくらい近いか”をベースにマッチングを行うのだ。飯田氏が話を継ぐ。

「ミキワメAIは活躍可能性を判定するだけでなく、『この候補者には面接でどのような質問をすべきか』や、『自社のどの部分をアピールすれば魅力的と感じてもらえるか』といった面接時の具体的なアクションまで提案してくれます」

終身雇用の終焉は、個人の才能を開花させる時代への転換点

飯田氏には、日本の社会構造に対する強い課題意識があった。

彼が起業したのは、東京大学経済学部に在学中だった2008年のこと。就職活動を控えた大学3年次、OB・OG訪問を重ねる中で飯田氏は疑問を抱いた。「どれだけの社会人が仕事にやりがいを感じているのだろう?」。

実際に話を聞くと、自分の仕事を生き生きと語る大人が少ないことに気付いたのだ。その後、飯田氏は「仕事にやりがいを感じる日本人は18%」というデータに触れ衝撃を受けた。この現状を変えなければ日本社会に未来はないとまで感じ、アルバイトで貯めた60万円を元手に学生起業へと踏み切った。

代表取締役社長飯田悠司氏。1985年生まれ、神奈川県横浜市出身。

では、どのように社会を変えるのか? 飯田氏が心理学の言葉を使い、まずは前提から説明する。

「人の幸福には『獲得的ウェルビーイング(キャリアアップなどの達成感による幸せ)』と『協調的ウェルビーイング(周囲と調和し『まあ悪くない』と思える幸せ)』という分類があります。欧米が前者を追求してきたのに対し、日本の社会構造は後者に偏り、『獲得的ウェルビーイング』のレベルが低いのです。もちろん、協調的ウェルビーイング自体にも大きな価値があり、決して悪いものではありません。しかし環境が激変する現代において、社会が過度に『協調』に偏り、『獲得的ウェルビーイング』を感じにくい構造のままであることが、働く人々の意欲の低下や閉塞感を生み、日本企業の成長を停滞させる一因となっているのです」

解説したい。戦後、日本は大量生産のビジネスモデルで成長してきた。例えば電機業界では、「わけがわからない新しいものをつくる」より、洗濯機やテレビなど既知のものを、より安く、より高品質に作る能力が評価された。「年功序列」の「終身雇用」も合理的だった。個人の才能を発揮するより、みんなと一緒に波風を立てず、同じことをコツコツ続けることが大切と、雇用側も、社員側も思ってきた。

しかしゲームのルールは変わった。同じ電機業界でも、現在はIT産業の勃興、電化製品のコモディティ化などにより、「わけがわからない新しいものをつくる」人物が評価される。スマートフォンも、ロボット掃除機も、ドローンも、日本は技術的にはつくれたが海外の企業に先を越された。若い人たちもこの変化を肌で感じ、画一的なものを求められる職場より、成長できる職場、自分がやりたいことができる会社を求めるようになった。そんな中、日本だけが過去の驚異的な成長にとらわれ、社会構造の転換に立ち遅れてしまった。

「だから今こそ、社員一人ひとりの才能を把握し、開花させる職場が求められているのです。それはもちろん社員も幸福にします。そして『ミキワメAI』は、これを実現するために進化を続けてきました」

社員のSOSを察知。AIが上司に代わってサポート

その二本柱が離職を防ぐ機能とコーチングを行う機能だ。

まず離職防止の要となるのが、「ミキワメAI ウェルビーイングサーベイ」。社員は月に1回、スマートフォン等からおよそ3分で終わるアンケートに回答する。

「サーベイは事前に取得した性格データと、直近の心の状態の浮き沈みを踏まえ、個別に『今、その人に聞くべき質問』を出します。さらに、性格に応じて結果の解釈も変化させます。わかりやすく言えば、いつも『絶好調です!』と答えるポジティブな人が『まあまあ好調です』と答えた場合、システムは『実は危険な状態』と正確に察知します。これにより、メンタル不調や離職の予兆を手遅れになる前に可視化できるのです」

管理画面で、ケアが必要な社員には「最優先ケア」「優先ケア」と表示される

不調が可視化されたら、AIが上長に対し、どう対処すべきかアドバイスを行う。部下の性格特性や現在のメンタル状態、さらには上司自身の性格特性までも踏まえた上で、AIが最適なコミュニケーション方法を提示する。

「すなわち、『最適な育成方法やコミュニケーションは人によって異なる』という人事の最も難しい部分に切り込んだのです。これが今は、コーチングにまで進化しています」

同社は2026年、ミキワメAI『AIコーチ』という、経営層や幹部の育成に踏み込んだサービスも始めた。個人の性格や将来の理想像を把握し、会社の経営戦略、周囲からの他者評価までもAIが統合、個人の成長に伴走するのだ。

「月に1回、AIがチャット形式で振り返りをサポートし、具体的な行動指針をフィードバックします。社長や上司から直接指摘を受けると反発する方もいますが、客観的なデータに基づいてAIから伝えられることで、幹部たちは冷静に内省し、自律的に成長サイクルを回すようになります」

マネジメントを科学するAIコーチングの威力

では、実際に「ミキワメAI」を導入した企業はどう変わるのか。

例えば、あるIT企業の事例だ。その会社は上場基準を満たしていたものの、「離職率が4割を超える」という理由で、毎年、IPO(新規株式公開)の審査に落ち続けていた。証券会社の審査において「組織に何か問題があるのではないか」と懸念を抱かれたのだ。そこでミキワメAIを導入すると、離職の予兆を未然に察知し、結果として1年で離職率は3割程度に下がり、その後は10%台で安定しているという。

また大手物流会社でもセールスドライバーの離職防止に活用されている。離職防止により採用費が大幅に低減、数億円が真水の利益となった。ウェルビーイングサーベイを用いて性格に合わせたケアを実施することで、導入前は3年間で50%だった新卒の離職率が0%に改善したという驚異的な数字も報告されている。

こうしたAIによる精緻な分析とアドバイスを可能にしているのが、同社内に2021年に設立された「組織心理研究所」の存在だ。

「博士課程以上で人間の心理や組織心理を研究した人物が、受検者の性格に応じて質問内容や結果の解釈を動的に刷新し続けています。世界的にも珍しい組織です。この専門家集団による研究成果がシステムに実装されているからこそ、当社は結果を出せています」

組織心理研究所のホームページ。
筆者としては、上の画像のようなコラムを読むだけでも学びがあった。
(トップページ)https://oprl.mikiwame.com/

人の特性や状態を正確に捉えられる技術は、採用やマネジメント以外の領域でも活きるはずと感じた。例えば、結婚を前提としたマッチングや家庭教師のマッチングなど、さまざまな可能性があるのではないか。

最後に――

皆さんは「アメンボ」の強さをご存じだろうか。水面に浮く小さな生物だが、この生物、実は「水面」という環境では無類の強さを誇る。水中にも陸上にも強敵がいるが、水面というニッチな環境に限っては、アメンボの独壇場なのだ。

職場の環境も、これと同じかもしれない。世間で言う「優秀そうな人」が、イコールあなたの会社でも優秀とは限らない。逆に前職で活躍できなかった人材も、あなたの会社なら大活躍してくれるかもしれない。

すなわちミキワメAIは、日本社会の幸福度を底上げするインフラになろうとしている、とも言える。今後が楽しみだ。

取材/文 夏目幸明
ミキワメAIの詳細は https://mikiwame.com

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