アドネス株式会社は、オンラインのスキル教育「スキルプラス」を中核に成長してきた。その三上功太社長が、いま新規事業としてAI業務基盤「Addness」を開発している。教育とAI。一見、別の事業に見える2つは、同じ1つの問いから出ている。「できない人を、できるようにするにはどうすればいいか」。その答えは卓見だった。
スキルプラスの土台にある学習法。三上が「無駄」と呼ぶものは何か

アドネスは2021年設立。中核事業は、1800本を超える動画でSNSマーケティング、デザイン、営業などのビジネススキルを教えるオンライン講座「スキルプラス」だ。法人向けには社員研修のカリキュラムを自動設計する「研修一括つくるくん」と「スキルプラス for Biz」を提供し、成長を続ける。
これらの土台にあるのが、独自の学習システム「サクセスラーニング」(特許第7610330号)だ。その仕組みを聞くと、三上功太社長はこう答えた。
「大学受験や資格試験は、出題された問いに対して正しいアウトプットを返すゲームです。ところが従来の勉強法は非効率的なんですよ。まず大量にインプットし、正解が出せるかを試し、出せなかったところをまた入れ直しているのですが……この『塊が大きすぎる』んです。わかりやすく言えば、範囲が広すぎる」
実を言うと三上は『ビリギャル』のような存在だった。高校3年の5月、目指す東大の合格確率は「E」判定。そこから10カ月で理科二類に現役合格した経験が、彼に「今の教育は無駄が多い」と気づかせるきっかけになっている。
「大学入学後、できない人をできるようにするにはどうすればいいか、という問いに向き合ううち、いい成績をとる人とそうでない人の違いが明確になったんです」
その差は『こなせるタスクのサイズ』だった。例えば「おいしいフレンチを作ってほしい」と言われたとしよう。いわゆる「賢い人」なら、レシピを見て、プロが料理する動画を観ればほどなく作れるようになるかもしれない。しかし多くの人は、範囲が広いと――すなわち「タスクのサイズ」が大きいと、記憶しきれず混乱してしまう。
この場合の最適解はタスクのサイズを小さくすることだ。まずは素材を料理しやすく食べやすい大きさに切る。それができるようになるまでひたすら切る。
「“都合よく視野を狭くする”ことが大事なんです。大きな目的のために、いまはこれだけ、と視野を狭めて集中する。それでしか物事は成せません」
この「切る」作業すら難しければ、包丁の持ち方、食材の押え方、とより範囲を狭めていく。逆に「切る」工程ができるようになれば、その後「焼く」「味を付ける」「盛り付ける」とステップアップしていく。こうして一歩ずつ進めば、できるようになる。
つまり、彼が売っているのは知識ではない。効率的な学習法だった。
「話すだけで、やるべきことが1つに絞られる」。AI業務基盤「Addness」
この学習法を、そのままシステムにしたのがサクセスラーニングだ。スキルプラスの受講生は最初に「目標」「今のスキルレベル」「学習に使える時間」を入力する。すると、やるべきことが順番に並んだ「アクションマップ」が示され、受講生は「次にやること」を1つずつ進めていく。
途中で詰まれば、コースごとの専門AIがすぐに答え、それでも解けなければ講師が48時間以内に回答する。並走する仕組みもある。24時間365日入れるオンラインの作業部屋「アクションLounge」があり、一人で手が止まりにくい環境が用意されている。
実をいうと人間は、何かをやることより「いつやるか」「何をやるか」「どの順番でやるか」を考えることに膨大なエネルギーを費やしている。アドネスは、これをいい意味で「本人に考えさせない」わけだ。
累計受講生は2025年9月に4000人、2026年3月に6000人を突破、10月には約8000人となったという。受講生の年齢は20代から60代まで広がり、建築業から独立した人、動画編集で収入を得るようになった人が事例として並ぶ。

そんなアドネスがAI事業へ進出している。教育とは無関係にも見えるが、実は根っこでつながっていた。三上が話す。
「僕は、利益のためというより、面白いゲームをやっていたいんです。学生の頃からずっと『できない人をできるようにできたら、すごくない?』というモチベーションでやってきました。それに性格として、無駄をなくすこと自体が好きなんですよ」
その彼がAIと出会うとどうなるか。答えが、社名と同じ名を冠したAI業務基盤「Addness(アドネス)」だ。2025年12月に正式リリースされ、登録者は初日で1000人を超えた。公式サイト(hp.addness.com)から登録すれば、個人でも無料で試せる。
では何をしてくれるのか。まず、Addnessに目標を話す。するとAIが目標を「目的→ゴール→ToDo」へと自動で細かくし、「いま集中すべきToDo」だけを提示する。毎朝、「今日やるべきこと」が厳選されて届く。チームで使えば、メンバーの進捗や成果物も1つの画面で見える。
お気づきだろうか。スキルプラスが受講生にしていたこと――タスクを細かくすることを、そのまま「仕事」に移植しているのだ。法人で利用する場合は、会社の目標、KPI、案件の達成などの長期的なToDoを入力すれば、これを今日のToDoまで分解して示してくれる。さらに、業務を簡略化する仕組みも入っている。取材の途中、三上は画面のボタンを押して見せた。録音が始まり、止めると自動で議事録が生成されて組織の共有フォルダに上がった。「録音→文字起こしのAIに読ませる→ダウンロードする→生成AIに要約させる」という手作業が目の前で消えた。
「目標に寄与しないタスクは、すべてbullshit job(どうでもいい仕事)です。それを絶滅させたい。『この案件を進めたい』とAIに言えば、どの案件かも、進めるとは何かも、必要な資料も、全部ここに紐付いている。社員がAIと話すだけで仕事が終わるようになるのが理想ですね」
「解像度が高い男」の生き方
「実はテストで満点を取るのは時間の無駄。できることを確認しているに過ぎない」と言い切る三上。彼は、世の中で「よし」とされていることを一つずつ分解し、組み立てなおしたのだろう。
そんな彼は、「幸福」や「愛」も分解しているようだった。
「いまの時代のいちばんの問題は、目的が定まらないことです。『自分が何をやりたいか』とよく言うけれど、それは何で決まるのか。その答えを我々は持っていません」
かつて目的は宗教が与えてくれたが、今はない。だから皆、漠然と「やりたいこと」を探して迷子になる。三上が自分に置いた答えは「他者に価値を提供することを楽しむ」だ。理由を聞くと、愛の定義が返ってきた。
「何を幸福とするか、それはやはり『与えること』でした。特にビジネスは、価値ある何かを創りあげ、それを人に与え、対価を頂くゲームです。では自分に何ができるかというと……それがサクセスラーニングであり、Addnessだったのです」

立派な理念に聞こえるだろうか。いや、三上は綺麗事を言っているのではない。
「人間の多くは自分が幸福であればそれでいいんです。ただ、人間は関係性の中で生きているので、仲間や社会に受け入れられたい。僕も同じです。そのために一番いいのが、価値提供ゲーム……すなわちビジネスを続けることの価値だ、と僕は思っています」
自分の幸福すら分解し、「与えること」が最適解だと導き出す。利他を説く経営者は多いが、利己から出発して利他に着地した経営者を、筆者は初めて見た。ある意味、社会貢献を説いてきた幾多の経営者より、解像度が高く、正直だ。
彼のような人間には、世直しほど効率的な幸福追求はないのだろう。社員教育やAIの導入に興味がある経営者は、一度彼と話してみてはどうだろうか。
Addness公式サイト:https://hp.addness.com
取材/文 夏目幸明

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