順通貿易:「速いのは順通」「高級品は順通」。中国人社長の「信用第一」一代記

越境EC市場の拡大に伴い、売り上げを伸ばしているベンチャーがある。日本の商品の代理購入サービス、さらには日本の商品を世界各国に発送する物流・通関サービスを展開し、年商約60億円を誇る株式会社順通貿易だ。王怡川(ワン イーチュウ)社長に「成長の理由」を聞くと、その答えは「信用」だという。

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商売の嗅覚が生んだ「物流インフラ」への転換 

王社長は中国・桂林の生まれ。1989年、12歳の時に父の会社の都合で来日し、中学、高校時代を東京・八王子で過ごした。しかし大学進学後、父の会社が倒産、アルバイトでお金を貯めて学業を続けたが、授業料を払いながら忙しい学部に通うことは体力的にも厳しく、大学は中退した。

その後、独力で小さな事業を起こした。中国で生産されたアクセサリー、携帯電話に付けるグッズなどの小物が日本で人気になったため、これを輸入・販売するビジネスを始めたのだ。

転機は、このビジネスを10年ほど続けた2010年代に訪れた。この頃から、日本に住む中国人が、中国の消費者に代わって日本の商品を購入して発送する「代理購入」が増え始めたのだ。王社長も当初は同じビジネスを始めようと考えたが、ここで持ち前の嗅覚が働いた。

「代理購入は始めやすい商売だから、やる人も多いんです。なら私は物流と通関の部分も事業化しようと考えました」

海外の顧客から「日本のこの商品が欲しい」と依頼が入ると、自社サイト経由で注文を受け、日本全国の問屋やメーカー、ECプラットフォームから商品を仕入れる。他の代理購入業者の荷物も受け取る。商品は相模原の自社倉庫に集約、ここで国際運送に耐えうる強固な梱包を施し、自社の物流・通関ルートに乗せて海外の消費者の元へ送り届ける。

「日本には素晴らしい商品がたくさんあります。私は『この事業を通じて、日本と中国の橋渡しをする存在になれる』と思いました」

順通貿易・王怡川(ワン イーチュウ)社長

「順通なら間違いない」妥協なき姿勢がもたらした大逆転

いいビジネスモデルだが「だから順風満帆」というわけにいかないのがビジネスの難しさだ。王社長は「梱包中に商品が壊れてはいけない」と商品を丁寧に梱包した。空港や中国国内の配送センターで商品がどう扱われるかわかったものではないからだ。

しかし、丁寧な仕事をすれば人手もかかる、梱包資材の購入費もかさむ。しかし顧客は「どうせ届くんでしょ?」と安い業者を選ぶ場合が多かった。すると雇用する人数ばかりが増え、発注は少ない、という状況が続く。

「中国には“最も大切なのは安さ”と考える人が多いんです。一番苦しい時期には、社員の給料や取引先への支払いにも困ることがありました」

ならば人数を減らし、商品を適当に包めばよいのでは?

「いいえ、貴重品を壊したくないじゃないですか。例えばバドミントンなどのラケットって壊れやすいんです。すぐ折れてしまう。化粧品も華奢ですね。届いたものが割れていていたらお客さんは悲しむでしょう」

ついに王社長は「給与を支払えないかも」と思うまでに追い詰められた。しかし、そんな折に商売が転機を迎えた。中国のユーザーの間で「高級品を運ぶなら順通貿易」という話が広まり、定着し始めたのだ。そして、倉庫に家電や装飾品など壊れものや傷をつけたくない高級品が続々と運び込まれるようになった。

名経営者の中には、利益より、「人間としてどうなのか」を考える人物が多い。王社長も、そんな人物なのだろう。

「この頃のことで覚えているのは、知人に『お金を貸してほしい』と頼んだら、みんな迷わず支援してくれたことです。やっぱり、大切なのは信頼ですよ。だから私は今も、請求書を頂いたら自分のことはすべて置いておいてまずは支払います」

そんな王社長のもとに、2019年、朗報が届いた。

順通貿易は創業からずっと、税関に申告したデータと荷物の中身を完璧に合致させ続けた。その結果、税関から『区分1』の認定を取得したのだ。

そう簡単には取得できない「快挙」だった。

誠実さが勝ち取った「区分1」と、グローバル展開の未来図

王社長が話す。

「区分2や区分3の場合、書類審査があり、時には梱包を開けて中の荷物をしっかり検査されます。しかし区分1はほぼノーチェックなんです。この変化がビジネスに計り知れないほどのメリットをもたらしました」

検査が免除されるから、他社よりも約3日間は通関スピードが速くなるのだ。当然、ユーザーは喜ぶ。すると、「高級品を運ぶなら順通貿易」という定説に「速いのは順通貿易」という話も加わった。こうして順通貿易は、年商60億円の企業になっていった――。

しかし王社長は「当社はこれから」と話す。

「これまでは『日本から中国へ、世界へ』という物流ルートでしたが、これからは『中国から日本へ』も重要です。中国の企業の中には、面白いアイデア商品や綺麗な小物を売っているところがたくさんあります」

相模原に新しい倉庫を稼働させ、圧倒的な物量をさばくために最新のロボットも導入、倉庫内作業の大幅な省人化と効率化も進める。さらに王社長の目はベトナム、シンガポール、豪州、米国など世界に向いている。日本や中国の商品の中で、現地の人がほしそうなものを選び、販売しようというのだ。

王社長が掲げる「信用第一」は、きっと世界でも通用するに違いない。

順通貿易のホームページより。トップページに新たな倉庫の写真が。
https://www.juntuujp.com/#/

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